20200508.jpg

(c) 東京大、JAXA


2019年2月22日(日本時間)、小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウの試料採取を目的とした第一回目の著陸(タッチダウン)に成功しました。タッチダウンの際に取得された超高解像度畫像から、タッチダウン時に打ち込まれたプロジェクタイルとスラスター噴射の影響で、多くの巖石と、巖石表面やその內部の隙間に付著していたと考えられる大量の赤黒い微粒子が舞い上がったことが分かりました。
またクレータの年代とクレータが掘り起こした地下物質の色の関係から、赤黒い物質はリュウグウの表層數メートルの厚さで全球的に層狀に存在していること、それらは30萬年前から800萬年前の間の短い期間にリュウグウ表面物質が、太陽に焼かれることで変質してつくられたことが分かりました。

この結果は、リュウグウは過去に現在よりも太陽に接近する軌道にいたことを示しています。また、著陸地點の表面には赤黒い物質だけでなく、変成をうける以前の青白い物質も存在していることから、変成をうけていない物質と変成をうけた物質の両方の物質が採取されたと期待されます。


これまでの「はやぶさ2」による観測からは、リュウグウ表面は巖に覆われており、月面のような微粒子の存在は確認されていませんでした。「はやぶさ2」はリュウグウの試料を採取するために、2019 年 2 月 22 日(日本時間)に第 1 回のタッチダウン運用を行いました。

図 1 はタッチダウンの際に広角の光 學航法カメラ(ONC-W1)によって取得された畫像です。

図1

図1 第一回タッチダウンの様子。2019年2月21日撮影(図中の日時は世界標準時)。
(c) JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、會津大、産総研

タッチダウンと同時に試料採取のための弾丸 発射と探査機上昇のためのスラスタ噴射によって、巖石だけでなく大量の黒い微粒子が舞い上がった ことがわかりました。飛ばされた巖石の多くは白く変化したことから、もともと黒い微粒子は巖石の表面 や內部の隙間に付著していたと考えられます。その後、舞い上がった微粒子はタッチダウン地點を中 心に、直徑 10m の範囲に広がり、表面に堆積しました。図2のように、タッチダウンの前後でタッチダウン地點付近の色が赤黒く変化したことから、タッチダウンと同時に舞い上がった微粒子が赤黒い色をしていたと考えられます。

図2

図2 タッチダウン地點周辺の色の変化。(A), (B) タッチダウン前(2018/10/2)と(C), (D) タッチダウン後(2019/4/4)の反射率と反射スペクトルの傾きの変化。點線の円の中心がタッチダウン地點。(c) Morota et al. 2020から一部改変

一方で全球的な観測から、リュウグウ表面は赤道ではやや青白く、中緯度では赤黒く、両極では特に青白いことがわかっていました(図3)。本研究でさらにクレータ同士が重なっている領域の色の分布を詳細に調べてみると、他のクレータよりも下にあるクレータ、つまり相対的に古いクレータの內部は周囲と同程度の赤さを持つのに対して、上にあるクレータ、つまり若いクレータの內部は周囲よりも青くなっていることがわかりました(図3)。

図3

図3

図3 リュウグウ表面の反射スペクトルの傾きマップ。上の図の黒丸、下の図の白丸はクレータを表す。內部が青いB1やB2クレータは他のクレータよりも上にあることから若いクレータであることがわかる。(c) Morota et al. 2020から一部改変

このことから、過去にリュウグウ表面は赤く変化するイベントがあったこと、內部が赤いクレータはリュウグウ表面の赤化が起きる前につくられたものであり、內部が青いクレータは表面の赤化が起こった後につくられ、地下の新鮮な青い物質を露出させたものであることがわかりました。表面の赤さ分布に緯度依存性があり、また、赤いクレータと青いクレータが明瞭に二分されることから、リュウグウ表面の赤化イベントは太陽による加熱または風化によるものであり、それは短期間で起こったことを意味しています。このことから、過去にリュウグウは一時的に太陽に接近した軌道にあったと考えられます。青いクレータは表面赤化が起こってからつくられたものなので、その數密度から表面赤化の年代を推定することができ、30萬年から800萬年の年代が推定されました。図4はこれらの結果から推定されたリュウグウの進化史をまとめたものになります。

図4

図4 推定されたリュウグウの進化史。(c) Morota et al. 2020から一部改変

タッチダウンで観測された赤黒い微粒子は、この太陽接近の際に変成を受けた物質が破砕されたものであると考えられます。また、著陸地點の表面には赤黒い物質だけでなく、変成をうける以前の青白い物質も存在していることから、変成をうけていない物質と変成をうけた物質の両方の物質が採取されたと期待されます。

論文情報

論文タイトル: Sample collection from asteroid 162173 Ryugu by Hayabusa2: implications for surface evolution

著者名 T. Morota1,2, S. Sugita1,3, Y. Cho1, M. Kanamaru4?, E. Tatsumi1,5,6, N. Sakatani7?, R. Honda8, N. Hirata9, H. Kikuchi7, M. Yamada3, Y. Yokota7,8, S. Kameda10, M. Matsuoka7, H. Sawada7, C. Honda11, T. Kouyama12, K. Ogawa9,13, H. Suzuki14, K. Yoshioka1, M. Hayakawa7, N. Hirata11, M. Hirabayashi15, H. Miyamoto1,21, T. Michikami16, T. Hiroi17, R. Hemmi1,O. S. Barnouin18, C. M. Ernst18, K. Kitazato11, T. Nakamura19, L. Riu7, H. Senshu3, H. Kobayashi2,S. Sasaki4, G. Komatsu20, N. Tanabe1, Y. Fujii8, T. Irie2, M. Suemitsu2, N. Takaki1, C. Sugimoto1, K. Yumoto1, M. Ishida10, H. Kato10, K. Moroi10, D. Domingue21, P. Michel22, C. Pilorget23, T. Iwata7,24, M. Abe7,24, M. Ohtake7,11, Y. Nakauchi7, K. Tsumura18,25, H. Yabuta26, Y. Ishihara27, R. Noguchi7, K. Matsumoto24,28, A. Miura7, N. Namiki24,28, S. Tachibana1, M. Arakawa9, H. Ikeda29, K. Wada3, T. Mizuno7,24, C. Hirose29, S. Hosoda7, O. Mori7, T. Shimada7, S. Soldini7,30, R. Tsukizaki7, H. Yano7,24, M. Ozaki7,24, H. Takeuchi7,24, Y. Yamamoto7,24, T. Okada7,1, Y. Shimaki7, K. Shirai7, Y. Iijima, H. Noda24,28, S. Kikuchi7, T. Yamaguchi7#, N. Ogawa7, G. Ono28, Y. Mimasu7, K. Yoshikawa29, T. Takahashi7$, Y. Takei7,29, A. Fujii7, S. Nakazawa7, F. Terui7, S. Tanaka7,24, M. Yoshikawa7,24, T. Saiki7, S. Watanabe2,7, and Y. Tsuda7,24.

著者所屬:
1. The University of Tokyo, Tokyo 113-0033, Japan.
2. Nagoya University, Nagoya 464-8601, Japan.
3. Planetary Exploration Research Center, Chiba Institute of Technology, Narashino 275-0016, Japan.
4. Osaka University, Toyonaka 560-0043, Japan.
5. Departamento de Astrofísica, Universidad de La Laguna, 38206 La Laguna, Tenerife, Spain.
6.Instituto de Astrofísica de Canarias, 38205 La Laguna, Tenerife, Spain.
7.Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA),Sagamihara 252-5210, Japan.
8. Kochi University, Kochi 780-8520, Japan.
9. Kobe University, Kobe 657-8501, Japan.
10. Rikkyo University, Tokyo 171-8501, Japan.
11. University of Aizu, Aizu-Wakamatsu 965-8580, Japan.
12. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tokyo 135-0064 Japan.
13. JAXA Space Exploration Center, Japan Aerospace Exploration Agency, Sagamihara 252-5210, Japan.
14. Meiji University, Kawasaki 214-8571, Japan.
15. Auburn University, Auburn, AL 36849, USA.
16. Kindai University, Higashi-Hiroshima 739-2116, Japan.
17. Brown University, Providence, RI 02912, USA.
18. Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory, Laurel, MD 20723, USA.
19. Tohoku University, Sendai 980-8578, Japan.
20. International Research School of Planetary Sciences, Università d'Annunzio, 65127 Pescara,Italy. 21. Planetary Science Institute, Tucson, AZ 85719-2395, USA.
22. Université C?te d'Azur, Observatoire de la C?te d'Azur, Centre National de le Recherche Scientifique, Laboratoire Lagrange, 06304 Nice, France.
23. Institut d'Astrophysique Spatiale, Université Paris-Sud, Orsay, France.
24. SOKENDAI (The Graduate University for Advanced Studies), Hayama 240-0193, Japan.
25. Tokyo City University, Tokyo 158-8557, Japan.
26. Hiroshima University, Higashi-Hiroshima 739-8526, Japan.
27. National Institute for Environmental Studies, Tsukuba 305-8506, Japan.
28. National Astronomical Observatory of Japan, Mitaka 181-8588, Japan.
29. Research and Development Directorate, JAXA, Sagamihara 252-5210, Japan.
30. The University of Liverpool, Liverpool L69 3BX, UK.

?Affiliation from April 2020: Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA), Sagamihara 252-5210, Japan.
?Affiliation from April 2020: Rikkyo University, Tokyo 171-8501, Japan
§Deceased.
#Current affiliation: Mitsubishi Electric Corporation, Kamakura 247-8520, Japan.
$Current affiliation: NEC Corporation, 1-10 Nisshin-cho, Fuchu, Tokyo 183-0036, Japan.

雑誌名:Science

DOI:10.1126/science.aaz6306